継続的に英語力の伸びを測定できる
スコア型英語4技能検定

school

Vol.103Case

生徒同士が4技能を使い、考え合う授業を通して、
広義での「コミュニケーション能力」を育てる

長野県上田染谷丘高等学校 様

長野県上田染谷丘高等学校 様

1901(明治34)年、上田高等学校女学校(旧制)として開校。普通科と国際教養科を擁する。伝統ある進学校として地域からの信頼は厚く、例年、国公立大学に60名前後が合格する。制服はなく、生徒たちは自由な雰囲気の中で学業の他、部活動や文化活動などに意欲的に取り組んでいる。

基本情報
公立、共学、普通科・国際教養科
規模
1学年約300名
主な進路
国公立大は東北大1名、高崎経済大11名、都留文科大4名、信州大15名、富山大5名をはじめ70名、私立大は上智大1名、青山学院大3名、立教大2名などに合格(2016年度入試/既卒生含む)

取り組みのポイント

  • 「コミュニケーション能力」の育成を目指し、手段として、英語を用いたコミュニケーション活動を重視。
  • 英語を話すのが恥ずかしくない、間違えるのが怖くない雰囲気をつくり、コミュニケーション活動を活性化。
  • 「手持ちの語彙やジェスチャーを駆使し、自分の経験や意見を相手に伝える活動」「レッスンテーマに関して日本語で自分の意見を述べるグループワーク」などアウトプット活動とそのためのインプット活動に工夫。
  • 実生活や入試問題を意識すると共に、英語のスキルを測定するために、定期考査の問題はすべて初見の英文で構成。

取り組みの背景

 同校には、中学校時代に学力が中上位層に位置していた生徒が多い。全体的に学習意欲は高く真面目に取り組む半面、自分から進んで取り組むという積極性には課題があった。
 生徒の大半は国公立大をはじめとした大学進学を希望している。その状況を考慮し、以前、英語科の大林慎太郎先生は受験対策を重視した指導に徹していたが、2年ほど前に指導方針を転換した。大林先生はその経緯を、「本校に赴任して一回り目の卒業生を送り出した時、『生徒は大学には合格したけれど、本当に役立つ英語力が身についているのだろうか』と思い悩みました。ちょうど教育課程が変わる時期でもあったため、コミュニケーション重視の授業を模索し始めたのです」と説明する。
 大林先生は、二回り目として指導を担当した2014年度入学生から、コミュニケーション活動を充実させるようになった。現在その学年は3年生となり、授業では生徒が自ら英語で積極的に表現する光景は自然なものとなっている。

取り組みの詳細

積極的に自分を表現できる雰囲気づくりが出発点

 コミュニケーション活動を充実させる上で重視しているのが、英語を話したくなる雰囲気づくりだ。「生徒はある程度英語が話せるにもかかわらず、恥ずかしがったり、間違えを恐れたりして消極的になりがちでした。積極的に話す姿勢がないと、せっかくスキルを身につけても活用できませんから、まず意識を育てることに力を入れました」(大林先生)。
 大林先生自身が「100%正しい英語を話しているわけではない」と伝えるなどして間違いを恐れないように働きかけるとともに、簡単な英語を使って表現するように促したり、ジェスチャーを教えたりして、自分の考えや思いを自発的に伝える姿勢を育てている。またペア活動は、常に同じ相手と組んでいると慣れてしまうため、時間内に何度も相手を変えている。「普段あまり話さない相手に対して自分を表現できなければ、どんなに英語を学んでも実生活では活かせないと考えています。生徒同士が積極的に活動し合うためにも、教員は良きファシリテーターであり、黒子に徹することを意識しています」(大林先生)。
 授業中に英語を使うのが当たり前という雰囲気をつくるため、コミュニケーション英語ではALTとのTTの機会を出来る限り多くし、ALTには、ペアワークのデモンストレーションをしたり、活動の指示をしたりする役割を任せている。

ペアワークやグループワークを頻繁に取り入れ教え合いながら理解を深める

 教科書の各レッスンは、導入が1コマ、内容理解の学習やコミュニケーション活動が4コマ、まとめが1コマの計6コマで構成される。授業はレッスンごとに作成したプリントに沿って進められる(資料1)。初見の英文に接し、意味を類推しながら理解していくプロセスを重視し、予習は「禁止」だ。
 毎回の授業の冒頭では単語帳を活用し、ペアを組んで単語の音読活動をしており、単語の小テストは毎週実施する。「英語によるコミュニケーションを豊かにするためには、語彙力の向上が欠かせません。そこで、教科書とは切り離した学習として継続的に取り組んでいます。授業のウォーミングアップとしての意味もあります」(大林先生)。
 レッスンの導入は、ALTとともにレッスンのテーマについて様々なことを英語で話し合い、ブレインストーミングを行う。そして、プリントの「Questions」を参照させてから、本文の音声を流し、教科書を見ながらリスニングをする。「入試問題では最初に設問を確認してから初見の長文を読むため、その流れを再現しています」(大林先生)。
 リスニング後は、ペアやグループを組んでQuestionsに取り組む。教え合いを通して理解を深めること、また生徒同士の会話を増やしてコミュニケーションしやすい雰囲気をつくることがねらいだ。Questionsは内容理解の問題が中心で、基本的に「英問和答」としている。英語で答える場合、意味の理解が不十分なまま、英文を抜き出して解答できる場合があるからだ。「書かれている内容が理解できなければ英語を読む意味がありませんし、『コミュニケーションツール』としての英語を学んでいることにはならないと考えています」(大林先生)

【資料1】授業用プリント

自分の言葉で表現するスピーキング活動を重視

 導入の学習を通して本文の概要を押さえた後は、より詳細な内容理解やコミュニケーション活動の授業に移る。中心となる活動は、2つある。
 1つ目は「スピーキング活動」で、レッスンのテーマに関連し、自分の経験や意見を述べ合う。例えば、「感覚マーケティング」がテーマのレッスンでは五感のいずれかを刺激されて買い物した経験を話す、「協調性」のレッスンでは他人と協調するために必要なことを自分の体験から話すといった活動を設定している。「自分自身の経験や考えを話すことで会話にリアリティが生じます。生き生きとしたスピーキング活動となることで、コミュニケーションの姿勢やスキルが高まりやすくなると考えました」(大林先生)。
 スピーキング活動では、1人あたり1分30秒ほどで発表し合ってから、数回ペアを変えて同様の活動を行う。2回目以降は、特に相手の発表をしっかりと聞いて質問するように指導しており、スピーキング力だけではなくリスニング力の向上にもつなげる。

スピーキング活動の様子

 コミュニケーション活動のもう1つの柱は、「ストーリーリテリング」だ。教科書本文の内容について、自分の手持ちの語彙に加え、ジェスチャーやボディーランゲージを交えて伝え合う。活動のキーワードは、「easy English(your own words)」「use gestures」「keep talking」の3つだ。「実生活では、常に辞書や単語帳を持ち歩いているわけではないため、自分の知っている語彙を用いて表現するトレーニングに力を入れています。本文のあらすじをただ述べるだけではなく、自分の言葉で話すことも重視しています」(大林先生)。

スピーキング活動時の板書

 ペアの二人が順に発表して終わるのではなく、質問し合って会話を続けることも大切にしている。「会話を成り立たせるのに欠かせない、間の取り方をしっかり意識するなど、英語のスキルだけではなく、広義のコミュニケーション能力を高めたいと考えています」(大林先生)。
 コミュニケーション能力を高める一環として、日本語による意見発表スキルのトレーニングにも注目したい。この学習は、教科書の補助教材であるレッスンの背景資料を読み、日本語で自分の意見を述べるというグループワークだ。レッスンの内容理解が深まるとともに、自分の意見をまとめて発表する練習はスピーキングやライティングの力につながる。「生徒にとって、初めから英語でアウトプットすることが難しいテーマもあります。関連する文書を読み、日本語で意見をまとめることによって、テーマに関する理解が深まり、アウトプットする内容を考える機会になります。ただ英語の長文を読むのではなく、テーマに対しての理解や考えを深めることは、教養を身につけることにもつながりますし、それが、社会人になるための土台作りにもなると考えています 」(大林先生)。

インプット(自宅)とアウトプット(授業)の相互作用を活かす

 以上のように授業は発声やコミュニケーションといったアウトプット活動が中心だ。授業では、授業中でなければできない活動に特化し、一人でもできる活動は行わない。どのような活動においても「コミュニケーション能力の育成」という目的がベースとしてあり、授業はその実践の場となっているためだ。一方、家庭学習はインプットの学習に特化しており、毎週「週末課題」として、長文問題を1題、文法問題は問題集4ページを課している。自宅で覚えたことを授業で使い、授業で使うために、また自宅で覚えるというサイクルができ、インプットとアウトプットが相互作用的に機能していると言える。
「自学自習ができるように解説が分かりやすく充実した問題集を用い、どうしても理解できなかった箇所は個別指導で対応しています。授業の時間は授業でしかできないアウトプットの活動に集中したいので、週末課題でしっかりとインプットできるようにしています」(大林先生)。

定期考査の問題はすべて初見の英文で構成

 定期考査では英語のスキルを測定することにこだわっている。リスニングや長文問題の題材には、教科書と全く同じ記載はなく、リライトされており、必ず初見となる。「入試問題や実生活では、当然ながら初見の英語に触れることになりますから、知らない英文を読む訓練を積ませたいと考えました。普段の授業を真剣に受けることが定期考査対策になると、頑張ってくれる生徒が多くいます」(大林先生)。
 定期考査の問題を初見の英文にしたことで、授業の展開方法も変わってきた。以前であれば、定期考査前はテスト範囲を終わらせることに注力してしまうこともあったそうだが、今の授業スタイルでは、コミュニケーション活動を実際に行うことで初めて見える「次にやってみたい活動、伸ばしたい技能」を考慮し、より生徒の身になる授業が展開できているようだ。
 現在、GTEC for STUDENTS(以下、GTEC)は6月に2・3年生の希望の生徒が、12月には1・2年生全員が受験する。4技能型のGTEC CBTも11月にGTECで上位の生徒が受験する予定だ。データは教員間で共有し、学校全体の英語指導の検証に役立てられる。「GTECで好結果が出ると、指導の方向性を誤っていないことを確認できて安心します」(大林先生)。
 GTECの結果は指導の成果を客観的に評価できることもあり、教員がお互いに授業を見学しアイデアを共有し合い、英語科全体の指導力を高める動きも出てきている。また、生徒にとってはコミュニケーション活動の成果を実感し、意欲をより高める機会となっているようだ。

取り組みの成果と今後に向けて

 授業ではコミュニケーション活動が定着し、生徒は間違いを恐れることなく、自己表現に進んで取り組むようになってきた。生徒からは、「これまでの英語の授業よりも楽しい」「もっと頑張って勉強したいという気持ちになる」といった声も聞かれる。
 生徒の成長は、GTECのスコアにも表れている。同校の平均スコアは着実に上昇しており、2015年12月に2年生が受験した結果は、リーディング、リスニング、ライティングのいずれも全国平均を上回る(資料2)。これについて、大林先生は次のように分析する。「リーディングに関しては、授業や定期考査で初見の英文を読む機会が多いため、初めて読む文章というのが意識レベルにおいて当たり前になっているのだと思います。リスニングは、ALTの話す英語を聞き慣れているほか、スピーキング活動による好影響が考えられます。またライティングは、スピーキング活動での自分の考えをまとめて発表する活動が活かされているのだと思います。実践的なコミュニケーションでは、相手の質問に対し即興で自分の考えをまとめて回答します。そういった経験を多く積むことから、テーマに対して『書きたいことが浮かばない』ということがなくなってきているのではないでしょうか」。
 コミュニケーション活動を中心とする指導に改めた当初は、「受験対策が手薄になるのではないか」と心配する声も教員間にあった。しかし、これまでのところ、模試の結果は例年と遜色がない。
 また、GTECの結果は向上していることもあり、今後もコミュニケーション活動を充実させていく方針だ。「多くの生徒がコミュニケーション活動を楽しんでおり、英語に対して前向きなマインドが生まれています。これからも生徒の真の意味で役立つ英語力を育てるとともに、さらなる進学実績の向上にもつなげていきたいと考えています」(大林先生)。

【資料2】GTECデータ

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