継続的に英語力の伸びを測定できる
スコア型英語4技能検定

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Vol.110Case

充実したアウトプット活動と授業実践、
定期・学力考査への出題工夫で、
生徒の英語4技能を総合的に育成

山形県立山形東高等学校

山形県立山形東高等学校

1884(明治17)年、旧制・山形県中学校として開校。「文武両道・質実剛健・自学自習」を校是とし、社会に有為な、人間性の豊かで優れた人材の育成を目指している。旧帝大をはじめとする難関国公立大に毎年合格者を送り出す県内屈指の進学校である一方、部活動も盛んで、フェンシング部や囲碁部などが県内外の大会で活躍している。
2018年度には各教科で学んだ基礎的な知識・技能を活用し、自ら課題の解決に向けて、主体的・協働的に取り組む「探究型学習」に重点を置く学科「探究科」を設置予定。

基本情報
公立、共学、普通科
規模
1学年約240名
主な進路
国公立大は、北海道大3名、東北大45名、山形大30名、東京大7名、名古屋大2名、京都大3名をはじめ、161名が合格(2017年度入試/既卒生含む)

取り組みのポイント

  • 授業にディベートへつなげるためのペアワークやグループワークを取り入れ、アウトプットを徹底させることにより、生徒一人ひとりに学習内容を定着させる。
  • 考査問題作成に向けて、生徒がどう答えてくれるだろうかという期待を持ちつつ検討する視点を大切に教科団でじっくり議論し、精選された問題を出題。
  • 精緻な採点基準で、色分け採点を行い、生徒の自由英作文を評価。

取り組みの背景

 山形県立山形東高校は、グローバル人材育成プロジェクトを立ち上げ、その一環としてスピーキングも含め英語によるコミュニケーション能力の実態把握と向上に着手したいという思いがあった。また教育課程が変わり、英語の教科書の内容が変化してきていることを感じ、授業実践の仕方もより工夫していく必要があると感じていた。生徒の英語4技能の総合的な育成に力を入れている。
 2015年からは、コミュニカティブな活動のさらなる充実を図るため、ベネッセの「GTEC for STUDENTS スピーキングテスト」を導入することにした。15年度入学生(現3年生)ではスコアの向上が著しく、1年生のものと2年生のものを比較すると16ポイントもの上昇が見られる。これは、全国平均の約2倍に当たる上昇幅だ。そうした驚異的な実績を挙げている同校の指導を見ていく。

取り組みの詳細

学習内容の定着に向け、授業でのアウトプットを徹底

 「コミュニケーション英語」の授業においては、生徒同士のペアワークを重視し、相手を替えながら頻繁に取り組む。例えば、毎回の授業の冒頭では、前時の振り返りとして空所補充形式の小テストを行うが、生徒は解答後にペアになり、完成させた英文を交互に音読する。教科書の英文の読解を進める中では、登場人物の心理や時代背景といった発展的な内容について意見を交換する。単元の終わりに、教科書の英文の著者や登場人物に向けてメッセージを書く際には、書こうとしている内容とその理由などを事前に発表し合う。指導の際には、音読やスピーキングを学習させるために、相手にどう伝わるかを意識させている。総じて以下3つの視点を大事にしているそうだ。①自分の視点、②相手の視点、③採点者の視点の3つだ。英語科の阿部久美子先生は、こうした活動の意義を次のように語る。「生徒一人ひとりが英語を使う場を多く設けるために、教師が指名して質問するのではなく、ペアワークを通して文法や表現などの定着を図っています。難しい内容であっても、友人同士で取り組めば、生徒は楽しく、しっかり向き合えるでしょう。積極的に話す姿勢が身についていくと考えています」。
 また、17年度からは、ディベートの授業への導入を進めている。そのきっかけは、16年11月に1・2年生の希望者を募って行った「即興型英語ディベート」の校内大会だ。大阪府立大の中川智皓先生を講師として招き、ルールや進め方などを指導してもらいながら、即興ディベートを2回行った。ディベートのテーマごとに専門的な用語などを一覧化した語彙リストを作成し、生徒が取り組みやすいようにした。そのためもあってか、どの生徒にも、自分の中に蓄えてきた知識や技術を用いて表現し、他者を納得させようとする姿勢が見られたという。英語科の井家勝己先生は、こう話す。「参加者の学力層は様々でしたが、多くの生徒が生き生きと意見を述べていました。そうした姿から、アウトプット活動の一環としてディベートを授業に取り入れられないかと考えました。準備にそれほど時間がかからない点も魅力的です」。

生徒がどう答えてくれるかという期待を持ち、教科団でじっくり議論、精選された問題を出題

 2年生の「英語表現」では、自分の考えを論理的に文章化する練習に力を入れている。教科書のユニット1で時制や仮定法といった文法項目ごとに英作文を行い、ユニット2からはパラグラフライティングにじっくり取り組む。生徒の文章は教師が回収し、ALTとともに添削。文法の正誤などから評価する表現点と、論理展開などから評価する内容点に分けて採点し、返却する。内容点の高い文章は授業で紹介し、どこに説得力があるのか、それはなぜかを解説する。
 「何を書いたらよいかが分からない」という生徒が出ないよう、ユニット2の冒頭では書きたい内容の整理に重点を置く。まず、所定のテーマに対する賛否と理由を小グループで大判用紙に書かせて黒板に貼る。次に、生徒がそれを参照しながら、意見を文章にする。「様々な意見が挙がるため、生徒は1つのテーマについていくつもの見方があることが分かります。そうして視野を広げてから、パラグラフの構成を考えながらまとまりのある文を書いていきます」(阿部先生)。
 2年生後半からは、パラグラフライティングの成果を測ろうと、定期考査や各学年で年6回(3年生は年4回)行う学力考査に自由英作文を出題している(資料1)。例えば、15年度入学生の2年生第6回学力考査(2月)では、仮定法の定着を強化するねらいもあり、「有名人と1時間過ごせるとしたら、誰とどのように過ごしたいか。(但し、その有名人が存命であるかどうかは問わない) 」といった内容を問う問題を、過去の大学入試問題を参考に作題し、英作文のテーマとした。学力考査の問題は、教科団が合議して問題を作成する。教科団で一致しているのは、出題した際に、生徒がどう答えてくれるだろうかという期待を持ちつつ検討するという視点を踏まえて、じっくりと作問議論を行っている点にある。
 ただ知識だけを問うのではなく、生徒の考えを深めるような作問を工夫している。英作文の出題にも、そうした同校の文化が表れていると言える。

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【資料1】  第2学年 第6回学力考査問題における自由英作文の出題 (過去の大学入試問題を参考に作題)

精緻な採点基準で、色分け採点を行い、生徒の自由英作文を評価

 学力考査後には、解答例とともに教師の講評(資料2)を配布する。この採点基準と生徒への返却の仕方は観点ごとに色分けされ、非常に精緻に定められている。具体的には、平成29年度2月に実施された第2学年第6回学力考査では、内容点(緑の点数)は8点満点4段階、表現点(オレンジの点数)も12点満点5段階、語数(赤の点数)は「80語程度」という指示だった場合には、69語以下および91語以上を減点対象、語数が乖離するごとに、減点幅が大きくなる。内容点8点満点と表現点12点満点を合計した点数から、語数に関して減点したものが最終得点(青の点数)として採点される形式をとっている。
 英語科の山川智昭先生は、次のように述べる。「生徒の英文を複数例示し、長所と短所を具体的に解説しています。授業におけるパラグラフライティングの添削指導との相乗効果もあり、生徒は読み手の視点から自分の文章を客観的に点検できるようになります。そうなれば、このままでは読み手が理解しにくいと判断し、表現を変えたり、論理的な文章となるよう構成を工夫するなど自己添削できる力につながると考えています」。

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【資料2】  第2学年 第6回学力考査問題における自由英作文の解答例・講評・採点基準

取り組みの成果と今後に向けて

 生徒は、一連の取り組みによって4技能をしっかり身につけている。パラグラフライティングの内容点に課題があった生徒も、授業でのフィードバックや学力考査の講評などを通して、次第に説得力のある文章が書けるようになっている。前述したとおり、2015年度入学生の「GTEC for STUDENTS スピーキングテスト」のスコアは全国的に見ても大きく伸びているが、与えられたテーマについて1分間で意見を述べる設問(PartD)の得点の高さからは、他者に分かりやすく伝える練習を積んだ成果がうかがえる。また、合議によって学力考査を作問するといった教科団の協働性は、教師の目線合わせにつながっている。これも、生徒の成長を支える要因と言えるだろう。
 大学入試改革の進展により、現行の制度においても入試問題には変化が見られる。例えば、個別試験において、受験生の自由な発想や意見を求める英作文を出題する国公立大が増加傾向にある。そうした中、生徒の考えを深める指導の重要性はますます強くなっている。「生徒の英語による思考力や判断力、表現力の向上は、切実な課題となっています。さらなる授業改善を図り、今後も教科団が一丸となって取り組んでいきたいと考えています」(山川先生)。

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