継続的に英語力の伸びを測定できる
スコア型英語4技能検定

左から高山先生、川久保先生、西川先生

Vol.114Case

教育委員会との連携を強化し、 組織的な指導改善に向けたPDCAサイクルを確立

京都市教育委員

京都市教育委員会

実践的英語力測定調査事業 -グローバル化に対応した英語教育改革の一つとして、生徒の英語4技能「読む、聞く、書く、話す」の  バランスのとれた育成のため、2016年度から民間の検定試験を活用した実践的英語力測定事業を実施。  対象:京都市立高校全校(8校) 高校2年生 約1、700名対象


京都市立堀川高等学校

校訓「立志・勉励・自主・友愛」に基づいて「自立する18歳」の育成を図ることを最高目標と位置づけている。2002年以来のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校であり、2010年からはコアSSHにも採択されている。2014年にはスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定も受けている。

基本情報
公立、共学、普通科・人間探究科・自然探究科
規模
1学年約240名
主な進路
国公立大は、北海道大7名、東京大14名、名古屋大2名、京都大45名、大阪大11名、神戸大15名、医学部医学科25名(上記大学を含む)をはじめ186名(2017年度入試/現役既卒計)

取り組みのポイント

  • 京都市教育委員会の主導により事業を実施し、同市立高校が成果と課題を共有。
  • 同市教育委員会と同市立高校が力を合わせ、指導改善のPDCAサイクルを確立。
  • 「GTEC」の悉皆受検を導入し、客観的なデータに基づいて英語4技能の課題を分析。

取り組みの背景

 京都市教育委員会は、グローバル化に対応した英語教育改革の一つとして、現行の学習指導要領の実施に先行し、2012年度からオールイングリッシュによる授業を推進し、生徒の英語4技能のバランスのとれた育成を進めてきた。2020年度入試から従来のセンター試験に代わって導入される「大学入学共通テスト」での英語4技能評価の導入が検討される中、これまでの英語指導の成果の検証とともに、生徒に4技能試験を経験させ、測定結果をもとに授業改善に生かす実践的英語力測定調査事業(以下「同事業」という)を2016年度から全市立高校を対象に実施することとした。
 京都市立堀川高等学校は、課題探究型の学びを通した主体的な学習を土台に、大学入試にも対応する学力を身につけた生徒を育成し、東京大学、京都大学をはじめとする難関国立大学に合格者を多数送り出している。大学入試改革への対応を重要課題の一つと位置づける英語科では、「大学入学共通テスト」を見据え、英語4技能の総合的な育成に力を入れており、その中でGTECも活用してきた。

取り組みの詳細

市立高校全8校が連携し、生徒の英語4技能の向上に向けた指導改善を推進

 同事業は、全8校(西京、銅駝美術工芸、京都堀川音楽、京都工学院、堀川、日吉ケ丘、紫野、塔南)の2年生全員がGTEC(3技能+Speaking Test)を受検し、その成果・課題を同市教育委員会・各校で共有。生徒の4技能の向上に向け、指導のPDCAサイクルの確立を目指すというものだ。
 堀川高校をはじめ、以前からGTECの3技能を導入していた学校は多くあったが、Speaking Testを含めて4技能を2年生全員が受検するにあたり、同市教育委員会が受検費用の半額を公費で負担することにした。合否ではなく、スコア・グレードで受検者の到達度が把握でき、技能別にレベルアップのポイント等を生徒向けにフィードバックできることなどを総合的に判断し、採択を決めたという。
 同市教育委員会では、初年度(2016年度)は、成果と課題を検討する場として、各校の英語担当教員が集まる合同分析会を同年秋に実施(ベネッセもアドバイザーとして参画)。また、同年度末には、英語科教員を対象に研修会を行い、合同分析会で出された課題への対応を示した。2年目となる2017年度は、個別具体的に成果と課題を把握するため、合同分析会ではなく各校において分析会を実施。自校の成果と課題の検証を行い、具体的な指導改善策を検討し、校内で指導への反映を図る。
 開始当初は同事業を円滑に進め、また各校の指導に効果的に生かされるために、同市教育委員会の高山指導主事らが丁寧に理解と協力を呼びかけた。「英語科主任の先生と個別に話をする機会を設けた学校もありました。生徒のための事業であり、生徒の英語力を上げるきっかけにしてほしいと、繰り返し伝えました」(高山指導主事)

英語科が課題意識を共有し、一丸となって、生徒のSpeakingスキルの育成を目指す

 堀川高校では、従来のReadingとListeningに加え、WritingとSpeakingも重視するという大学入試改革の方針が見えてくる以前から、それに応じた指導改善を推進し、授業にはプレゼンテーションやスピーチ、ディベートといった発表活動を積極的に取り入れている。発表活動の原稿を作成する中で、生徒はWritingスキルを着実に身につけている半面、Speakingスキル自体の育成には少なからず課題があった。英語科全体でSpeakingの指導・評価の方針は確立していたが、生徒の力を測るに際してよりふさわしい試験のあり方を模索していた。そのため、同事業によってSpeaking testの外部試験を生徒が受検することに対しては、校内でのSpeaking試験の改善にもつながることへの期待もあり、当初から歓迎された。
 Speaking Testを初めて受検するという生徒が多い中、タブレットを用いるという物珍しさもあってか、生徒は楽しそうに取り組んでいるが、受検後の様子からはSpeakingへの不安や自信の無さもうかがえるという。英語科主任で1学年担当の川久保和代先生は、こう述べる。「Speakingへの苦手意識の克服ができるような活動を、授業に導入していかなければならないと感じます。そうした課題意識を先生方と共有し、改善に向けて動くきっかけになっています」
 また、Readingのスコアを伸ばした生徒に対して「この1年間でどのような学習をしてきたのか」をインタビュー調査し、それを学年全体に発信した。英語科で1・2学年担当の西川光先生は、次のように話す。「自分と同学年の生徒が行っている学習であれば、生徒は刺激を受け、『自分もやってみよう』という気持ちになるでしょう。そうしたプラスのフィードバックができるようになりました。また、毎週のReading課題にきちんと取り組んでいる生徒の多くはReadingのスコアを伸ばしていることが分かり、指導の成果を検証できました」

客観的なデータの下、各校が課題に即した授業研究を推進

 GTECは各技能のスキルや能力を詳細に分析することができる。ベネッセは、GTECの結果をもとに問題別の正答率から観点別の強み・弱みを示す分析資料を作成し、各校及び同市教育委員会に提示している。
 たとえば、2017年度の対象校の全体的な傾向では、Listeningスキルの定着が見られ、同市教育委員会が進めてきたオールイングリッシュでの指導の成果が確かめられた。また、Writingスキルも高かった。
 一方、Speakingスキルにおける「発信力」や「即時対応力」には課題があった。各校では、そうした全体的な傾向と自校の課題を基に、授業研究に取り組んでいる。以前は「英語での授業の推進」「言語活動の充実」といった同市立高校共通のテーマを設定して授業実践を行っていたが、客観的なデータの下、各校が課題に即したテーマを設定し、授業改善に取り組んでいる。

取り組みの成果と今後に向けて

 同事業を通して、各校には、GTECの受検→分析→課題の発見→それに応じた研修会・指導改善案の作成・授業実践というPDCAサイクルが根づきつつある。分析会などによって、各校は自校の強みや弱みをより客観的に把握できるようになり、また、悉皆受検によって、市立高校全体の英語指導の成果や課題を把握することができるようになっており、市全体としての指導改善に向けたPDCAサイクルの確立が進んでいる。この体制が発展していけば、他校の実践を自校の実態に応じてアレンジしながら取り入れやすくなるだろう。そうなれば、各校の指導は何倍も効果的になり、生徒の英語4技能のさらなる育成につながるに違いない。
 同市教育委員会では、教師の指導力の向上に向け、今後は指導法の共有にもさらに力を入れていく。「研修会では授業実践を発表してもらい、個々の学校で行われる公開授業についても、教育委員会から英語科の先生に積極的な参加を呼びかけたいと思っています」(高山指導主事)
 堀川高校では、GTECの成績の分析で洗い出された課題を、日々の指導に反映しやすい体制の整備を進める。生徒にSpeakingスキルを着実に定着させられるよう、従来の表現活動での評価を見直すとともに、フィードバックの強化を図る。「3年間を見通した連続的な指導計画の再構築を急いでいます。そうして各学年の取り組みに有機的なつながりを持たせ、段階的に生徒を伸ばしていきたいと考えています」(西川先生)

左から高山先生、川久保先生、西川先生

【参考資料】平成29年度GTEC for STUDENTSおよびGTEC Speaking Test校内分析会実施報告書

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