継続的に英語力の伸びを測定できる
スコア型英語4技能検定

Vol.92Case

CAN-DOリストに基づいた系統的指導に組織で取り組み6年間を通して4技能をバランスよく育成する

千代田区立九段中等教育学校 様

千代田区立九段中等教育学校 様

平成18年、都内初の区立中高一貫教育校として開校。中学校に相当する前期課程、高校に相当する後期課程から成る。教育目標を「豊かな心 知の創造」と定め、豊かな教養と高い志を身に付け、リーダーとして創造的・意欲的に行動できる資質や能力を育成する学校を目指し、教育活動の充実・発展を推進している。

基本情報
公立、共学、普通科
規模
1学年約160名
主な進路
国公立大は、東京大、一橋大、お茶の水女子大、東京外大などに計29名が合格、私立大は、早慶上智に35名が合格(2014年度入試)

取り組みのポイント

  • 学年ごとに4技能の到達目標を設定した「KUDAN CAN-DOリスト」に基づき、系統的に指導。
  • 指導案や教材の共有化及び自主研修の実施により、組織的な指導体制を構築。
  • 各レッスンの最後にまとめのスピーチをするなど、アウトプットする機会を充実。

取り組みの背景

 同校は卒業時における英語の到達目標を次のように設定している。
 この達成に向け、学年ごとに4技能の到達目標を設定した「KUDAN CAN-DOリスト」(資料1)に基づいて系統的に指導しており、年度末に生徒の自己評価によって到達度を確認している。目標に到達する生徒は毎年9割以上に上り、75%以上の生徒の目標到達という目標を上回っているという。
 CAN-DOリストの特徴として、各技能が「実生活に関わること」「本校独自の行事やKudan Methodに関すること」「授業に関すること」の3つの観点で整理されており、より具体的な場面に即した指導が可能になることが挙げられている(スピーキングは「授業に関すること」を「発表」と「会話」に分けて4つの観点で整理されている)。

  • 英語を通じて積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を身に付けている。
  • 4技能をバランスよく身に付け、場面に応じてコミュニケーションをとることができる。
  • 知識を深めたい分野について、英語を媒介として独学することができる。
  • 希望の進路を実現するために、大学入試等において必要な力を身に付けている。

 こうしたCAN-DOリストを「作って終わり」にしないために、常に有効性や実効性を高める努力を続けている。指導教諭の本多敏幸先生は、「CAN-DOリストの作成自体はそれほど難しいことではありません。それをいかに授業に落とし込んで目標に到達させるかが肝心です」と強調する。そうした考えのもと、ここ4年間にわたり、CAN-DOリストの4技能の中から、1年に一つの技能を取り上げて校内研修を実施して指導方法を研究し、毎年、改訂を重ねてきた。2014年度は最終年としてライティングの研究に取り組んでいる。

【資料1】CAN-DOリスト

取り組みの詳細

中高一貫6年間を通して組織的な指導を徹底

 6年間の系統的指導の実現に向け、チームによる指導体制の構築に力を注いでおり、その一環として共通の指導案を作成している。指導案には、各授業の展開や活動内容、また教師の具体的な発話(Teacher Talk)、宿題の内容までが詳細に記されている(資料2)。教師のパソコンには、6年分の指導案や教材が蓄積されており、年々更新されている。「どの教師がどの教室に入っても問題なく指導できる状態にしています。こうした指導体制があることで、担当教師による指導の内容や進度の差が生じず、6年間を通して確実に学習が積み上げられると考えています」(本多先生)。
 さらに年間10回以上の自主研修を実施し、指導に関わる知識や技能の共有を図り、すべての教師が1~6学年の学習内容を把握するように努めている。実際に、高校の教師が前期課程、逆に中学校の教師が後期課程を指導するケースは多い。

【資料2】共通指導案(一部抜粋)

英語の歌やスピーチなどをうまく取り入れ1年次から4技能をバランスよく育成

 英語を通じたコミュニケーションの力の育成を重視し、入学直後からスピーキングを含めた4技能の指導に力を注ぐ。そうした指導方針を象徴するのが、合格者に対して入学前に課す宿題だ。英語の歌やスピーチなど題材を自由に用意し、20秒間、意味は分からなくてもよいので、発音を完全にコピーするように求めている。「英語を日本語に直して捉えるのではなく、英語のまま捉えることの大切さを最初に伝えています」(本多先生)。
 スピーキングは、主に「会話」と「発表」の観点に分けて指導しているのが特色だ。「事前に準備したスピーチのような発表ができるだけでは、英語を話せるとは言えません。そこで、即興的な会話をする力の育成にも重点を置いています」(本多先生)。
 会話の学習活動として、1年次の初期には質問と応答を練習するペア活動に取り組む。一人が質問リストから選んで質問すると、相手は自分の情報を付加して二文で答えることをルールとしている。例えば、“Do you like sports?”という質問に対し、“Yes, I do.”だけではなく、“I like baseball.”などと付け加える。さらに会話を発展させるために、あいづちや繰り返し(echoing)の仕方などを学ぶ。
 こうした学習を通して会話の土台となる力を身に付けてから、より本物の会話に近いチャットの練習に移行する。チャットでは、ペアを組み、1分間を目標に身近なことについて質問や応答を繰り返して会話を続ける。
 一方、発表の学習活動として、1年次は教科書の会話文を暗唱し、そこにオリジナルの原稿を加えてクラスの前で発表するskitなどを行う。さらに、2年次はキーワードや絵を参考に、教科書の本文を自分の言葉で伝えるretellingなどを行い、3年次になると自分の好きな物を見せて説明するShow & Tell、制限時間内に何かをアピールする「30秒コマーシャル」といった、より高度なプレゼンテーションに発展させていく。
 英語によるコミュニケーションの力を底上げする活動として、「イングリッシュシャワー」にも注目したい。これは、隔週で始業前の20分間、近隣大学に通う各国の外国人留学生を招いて、トークを聞いたり、ゲームを楽しんだりする活動で、生きた英語や外国文化に触れさせるのが狙いだ。また留学生の出身国によって異なる様々なアクセントの英語に慣れることもできる。「留学生の話す英語の中には、知らない単語や表現がたくさん出てきます。その中から自分が分かることをキャッチし、それをもとに全体像を理解していくことが大切だと、生徒に伝えています」(本多先生)。
 そして、分からないことは自分で調べられるように、入学時には辞書を全員に購入させて、使い方の指導を徹底している。電子辞書は後期課程から使用を認めており、その活用法の指導にも力を入れている。
 こうした授業や活動の結果、前期課程が終わる頃には、生徒の大半が身近な話題であれば3分以上は即興的な会話ができるようになるという。さらに後期課程に入ると、ペアやグループによる活動が一層増えていく。

後期課程では教師の説明時間を極力減らし授業時間内に学び合いを多く行う

 後期課程のレッスンの大まかな流れを見てみよう。
 1コマ目は本文に入る前にキーワードを確認したり、関連する話題についてディスカッションしたりして関心を高めた後、レッスン全体を一気に黙読する。「初見の文章を読む力をつけるために予習は課しません。また辞書も使用せず、分からない単語や表現は推測しながら読み切るように指導しています」(本多先生)。その後、本文のリスニングを行ってから、教師の質問について、ペアやグループで考えて理解を深めていく。
 2コマ目はレッスン全体の文法の解説やサマリーの作成を行い、さらに3コマ目以降はパートごとに音読やディクテーション、Q&Aといった様々な活動を行う。「教師が指名して答えさせる一方通行的な指導ではなく、ペアやグループに考えさせて発表させる学習を主体としています」(本多先生)。
 生徒同士が話し合ったり、発表したりする時間を多く確保するために、文法については自学自習を基本としており、教師からの説明は最低限に留めている。
 各レッスンの最後に全員がスピーチする時間を設けているのも特徴だ。すべてのレッスンで実施するため、後期課程の3年間だけで20回以上経験することになる。スピーチ内容は、感想やサマリー、自分なりの意見など、レッスンによって異なり、ペアで即興のチャットをさせることもある。制限時間は1分30秒としており、120~130語ほどで構成する生徒が多い。毎回のスピーチは評価の対象となり、内容や態度、流暢さといった観点から、5段階で総合的な評価をしている。「評価の基準については事前に教師間で話し合い、基準を合わせています。ただ、あまり細かく設けると教師の主観が強く反映されかねませんから、あくまで総合的な評価としています」(本多先生)。
 4年次ではディベートも取り入れている。1グループ3人が立論や反論をしながらディベートを行い、得点の高い2グループは学習発表会の決勝で競い合う。平成26年度では、東京都の高校生英語ディベートコンテストのB部門(一般生徒)において優勝した。

取り組みの成果と今後に向けて

 CAN-DOリストには、外部検定試験における目標としてGTECの具体的数値を設定している。卒業時のGTECスコアは560を目標としているが、現状、平均スコアは600点前後に達している(資料3)。特にリスニングのスコアの高さが際立っている。客観的なスコアに加え、指導の成果はパフォーマンスに表れるという。「即興の会話をさせると、接続詞を適切に使って内容の深い話をしたり、ライティングでは分量や内容、正確性などがどんどん高まったりと、日々の授業の中で成長を実感する場面があります」(本多先生)。
 一方、当面の課題は、組織による指導体制をより強化していくことだ。「教師が入れ替わっても同様の指導を継続する必要がありますから、開校から9年間で蓄積してきた指導案や教材などの整理を進めています。『こういう課題に対しては、この指導が有効』といったことが即座に導き出せるように、データやノウハウをシステム化したいと考えています」(本多先生)。

【資料3】GTECスコア推移

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