継続的に英語力の伸びを測定できる
スコア型英語4技能検定

Vol.97Case

課題研究と活動中心の授業により
探究力、表現力を高める

富山県立高岡高等学校 様

富山県立高岡高等学校 様

1898(明治31)年、富山県高岡尋常中学校として創立した。富山県第二中学校、富山県立高岡中学校を経て、1953(昭和28)年に現校名に改称。教育目標は「質実剛健」「自主自律」。2003(平成15)年にスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け、2011年に理数科にかえ、人文社会科学科、理数科学科(探究科学科)を設置。2014年にはスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を受け、大学や国連機関等と連携して、富山の地域研究と世界への発信に力を入れている。部活動も盛んで陸上競技部は全国大会の常連として知られるほか、2014年には、かるた部、書道部が全国大会出場を果たしている。

基本情報
公立、共学、普通科・人文社会科学科・理数科学科
規模
1学年約280名
主な進路
東京大10名、京都大11名、大阪大9名、東北大6名など国公立大206名(2015年度入試)

取り組みのポイント

  • 教科「情報」の時間を生かして探究力のベースを培う
  • 1年間の探究活動と海外研修により探究力、表現力を高める
  • 活動中心の授業により英語で議論できる力を育成

取り組みの背景

 2014(平成26)年、高岡高校は県内で唯一スーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定された。背景にはここ数年、同校が力を入れてきた探究活動、英語力向上等の実績がある。
 同校では長らく、理数科1クラスで探究的な活動を行ってきた。2011年、県の施策によって同校と富山高校、富山中部高校の3校では、理数科にかえ、人文社会科学科、理数科学科各1クラス(合わせて探究科学科)が設置された。社会のグローバル化、情報化の中にあって、主体的な探究心や創造性を身に付けた生徒、チャレンジ精神や知的好奇心、思考力・表現力、高い志や人間性を身に付けたリーダーを育てることをねらいとしている。
 2012(平成24)年には、文部科学省の「外部専門機関と連携した英語指導力向上事業」(県内の事業名は「とやまの高校グローバル人材育成促進事業」)を受けて、授業改善や教材開発など英語教育の改革にも取り組んできた。探究活動の推進と英語指導の改善という二つの流れをうまく融合し、2013(平成25)年、SGHに名乗りをあげ採択された。

取り組みの詳細

読む・書く・表す・話すゼミで探究活動の基礎を身につける

 高岡高校のSGHは「幅広い教養と課題解決力をそなえ、ふるさとに誇りと愛着を持ったグローバル・リーダーの育成」を目標としている。取り組みの中心は探究科学科における課題研究である。メインテーマは「きときと! グローバル富山」。“きときと”とは「新鮮で活きが良い」という意味の富山弁。ふるさとの富山について、大学や博物館、国連機関など外部機関の力を借りながら、 文理を問わない幅広いテーマで探究活動を行い、成果を世界に発信する。
 1年生ではTKR(Taka-Ko Research)Ⅰとして、2年生から1年間をかけて行う課題研究の基礎となる探究力と表現力を身につける(資料1)。同校の言う探究力とは、探究活動を行うために必要な課題設定力、仮説形成力、課題解決力、プレゼンテーション力、コミュニケーション能力の総称である。2単位の教科「情報」の時間を活用し、少人数によるゼミ形式で、情報収集、分析、整理、プレゼンテーションを実施する。
 1学期は教科書に沿ってPCスキルやプレゼンの方法を学び、2学期からはTKRⅠαとして、学校独自テキストに基づき、「読む」「書く」「表す」「話す」の4つのゼミをローテーションで受講する。
 「読む」ゼミは、地歴公民の先生が担当するメディア・リテラシーの講座で、新聞の社説の読み比べなどを通じて分析的読解力を育成する。「書く」ゼミは国語の先生の担当で、レポート、論文の作成指導を行い、論理的思考力、表現力の育成をめざす。「表す」ゼミは、数学の先生がワード、エクセルを使った表計算、グラフ、文書の作成と、それらを使って分かりやすく表現する力を育成。「話す」ゼミは英語担当の先生が、論理的で説得力があり、かつ印象に残るプレゼンの仕方を教授する。それぞれの教科に近い題材で実施することで、探究に必要なスキルを磨くと同時に教科学力を高めるのもねらい。ゼミはクラスを2つに分けて20人で1ゼミを作り、各教科2時間1コマ×3回のローテーションで実施する。
 αで身につけた技術を実地に活用していく時間が、2年生の課題研究の予行演習である3学期のTKRⅠβである。文理それぞれのテーマについて、各3時間を使って調査から探究、発表を行う「ミニ課題探究」である。2014年までは人文社会科学科、理数科学科とも、それぞれ先生が提示したいくつかのテーマの中から人文系、理数系のテーマを一つずつ選んで探究活動に取り組んできた。人文社会科学科の生徒が理系の、理数科学科の生徒が文系のテーマに取り組むことで視野を広げるのがねらいだったが、それぞれ2コマ×3回の授業で一定の成果を出すには時間が足りないことから、2015年度からは文理いずれかのテーマに絞って、6コマで1テーマを追究することになっている。

【資料1】TKRテキスト(序章部分抜粋)

生徒がやりたいと思えるテーマで研究へのモチベーションを高める

  2年生の課題研究(TKRⅡ)は、グループで1年間1つのテーマを追究する。主に「総合的な学習の時間」などを利用して、週2時間実施している。
 テーマ選びは1年生3学期に始まる。人文社会科学科は国語、地歴、公民、家庭など、理数科学科は数学、物理、化学など、一般の教科・科目に即したカテゴリーの中から1つを選び、生徒が各自で研究テーマを考える。その上で2年生4月、カテゴリーごとに生徒が集まってアイデアを共有し1つのテーマを設定する。
 1カテゴリーの人数が多い場合は1班3~5名になるように班分けをし、それぞれ古代史と近代史を研究するという風に、異なったテーマを追究していく。2014年度は人文社会科学科が「民話から探る富山」「雪と暮らす富山の魅力とは」、理数科学科が「蜃気楼を科学する」「ボルボックスの一生について」などのテーマが設定された。
 テーマ設定が課題研究の面白いところでもあり、難しいところでもあると、串田至人教頭は語る。「単なる調べ学習で終わらせず、どこまで深められるかが探究活動のポイントです。その成否は、研究テーマの設定が左右します。テーマ設定はSGHのテーマに沿ったものにしてほしいという思いはありますが、まずは生徒自身がやりたいと思ったものに挑戦させるのが本校の方針です。身近な疑問を膨らませることでモチベーションを高くして、研究に取り組んでほしいと思っています」。

大学教員や外部機関と連携して探究活動の専門性を深める

 グループ分けができると、それぞれ担当の先生が1名ずつついて、ファシリテーターとして生徒の議論を整理したり、研究の方向性についてアドバイスしたりしながら活動をサポートしていく。探究科学部長の越後喜紀先生は「生徒は研究の成果にこだわりがちですが、それ以上に大切なのはプロセスです。試行錯誤を繰り返しながら、きちんと研究の手順を踏んで一つの考察に至ったのであれば、その成果がたとえ稚拙であっても課題研究として意義があると伝えています」と話す。
 こうした議論を通して協働性を高めていくことも、同校の探究活動のねらいの1つだ。生徒はグループ内で意見をぶつけ合い、担当教師のアドバイスも取り入れながら、役割分担の仕方や協働して物事を進めていく力を身につけていくのである。さらに、各グループには顧問として富山大学の教員各1名がつき、専門的な見地から生徒の相談に答える。ただし、顧問はテーマ決定の前にすでに決まっているため、担当するグループの研究テーマについて専門的な知識を持っているとは限らない。その場合は、研究手法や進め方、学術的な妥当性、論文の深め方など学術研究の基盤になる考え方について指導してもらうよう依頼している。
 そのほか、北東アジアの海洋について研究、調査を行うNOWPAPなどの国連機関、高岡市万葉歴史館や高志の国文学館などの地元施設との連携もあり、これらの外部機関から専門的なアドバイスを得ることも少なくない。

独自のルーブリックで探究活動の成果を評価

 2年生5月には、学科内で課題設定報告会が開かれ、各グループの研究テーマや研究の進め方などを共有する。生徒同士でテーマ設定の妥当性や研究の見通しについて意見や感想を述べ合い、テーマや研究計画のブラッシュアップを図っていく。
 研究は週2コマの課題研究の時間に進める。夏季休暇中も自主的に集まって活動を進める熱心なグループもある。7月にはSGHとしての教育活動の指導効果を測定する目的で、「グローバル・リテラシー&スキルテスト」を受験する。国際的素養としての基礎的・汎用的能力や、グローバルな社会問題に対する関心、態度をどの程度育むことができているかを客観的に測定している。
 課題研究によってどのような力がついているのかを、生徒自身が把握するための独自のルーブリックも作成している(資料2)。課題設定報告会や中間発表会などの節目ごとに用意しており、生徒自身の自己評価、他の生徒から見た他己評価で行う。たとえば5月の課題設定報告会では、「研究テーマの設定」「研究(実験、調査)計画」「発表」の3観点について、レベル1~4の4段階で評価した。どの観点を重視すべきかは教科特性によって異なるため、各観点の配点は100点満点になるようにグループ担当の先生が決める。
 「生徒が自分自身の成長を実感したり、課題を発見したりするためには、自分は今どこにいて、次に何をすればいいのかということが一目でわかるルーブリックが必要です。まだ始まったばかりで、今後修正点が出てくると思いますが、先生方や生徒の意見を聞きながら、活動内容や生徒の実態に合ったものに改良していきたいと考えています」(串田教頭)。

【資料2】課題研究(課題設定報告会)評価表

中間発表でのアドバイスが研究を飛躍的に向上させる

 課題研究の中間発表会は10月上旬、文化祭の期間中に在校生や保護者、中学生を前に、ポスターセッション形式で行う。発展途上の研究ということもあって、顧問の大学教員や校内の先生方から厳しい質問が次々と飛ぶ。これらの質問やアドバイスをもとに、生徒たちはさらに研究を深めたり軌道修正したりしながら、12月の最終発表会に向けて研究内容のブラッシュアップを図っていく。「最終発表までに飛躍的に研究レベルが向上するグループが多い」と越後先生は語る。
 12月の最終発表会は校内のホールで、探究科学科の1年生、普通科の2年生の希望者、および保護者や中学生を前に行う。その直後には、探究科学科をもつ富山高校、富山中部高校と合同で発表会を実施して1年間の課題研究は終了する。課題研究を行った生徒からは「自分で課題を設定していく過程がこれほど楽しいものだということを初めて知った」「課題発見、課題解決の方法を学ぶことができ、今後の学習に活かしたいと思った」といった感想が聞かれた。

「本物」を体験させることで社会的な視野の拡大を図る

 探究科学科が課題研究とともに重視しているのが、TKE(Taka-Ko Experience)と呼ぶ体験学習である。校内では得られない「本物」に触れることで、豊かな人間性を育むのがねらいだ。1年生に1泊2日で行う立山実習は、立山曼陀羅絵解き体験や立山カルデラ砂防博物館の見学などを行い、立山の文化や自然に触れる。1年生3学期の科学探訪では、2泊3日で東京、茨城に赴き、茨城県つくば市のJAXA(宇宙航空研究開発機構)や東京大学地震研究所、東京証券取引所、東京国立博物館などを訪問し、施設を見学したり、同校のOBと懇談会を開いたりする。活動は班別に行い、訪問先へのアポ取りや行動計画の立案なども生徒自ら行うことで、「行動力」を身につけるのも取り組みのねらいである。「座学の勉強だけでなく、知識や技術が実際にどのように役立っているのかを体験的に学んでいくことが探究科学科の醍醐味です。本物を目の当たりにすることで、社会の課題を自分自身の問題にひきつけて考え、答えのない問いや解決困難な問題に取り組む意欲と姿勢を育みたいと考えています」と串田教頭は語る。

【資料3】英語表現Ⅰ 授業プリント

活動主体の授業で実践的な英語力を育成

 2012年に、文部科学省の「外部専門機関と連携した英語指導力向上事業」の指定を受けて以来、同校ではコミュニケーション能力の向上を図るための授業改革や課外活動の充実に取り組んできた。
 授業では教科書の内容理解にとどまらず、4技能を総合的に伸ばすことを目標としている。特にWritingとSpeakingの活動の割合を増やし、単に教科書から答えを見つけ出すのではなく、自分の意見を英語で述べられる活動を増やした。定期テストも教科書の文章をそのまま出すのではなく、同じようなテーマの初見の文章を読んでサマリーを作らせたり、自分の意見や感想を書かせたりするなど、CAN‐DOリストに基づいて、どこまでスキルが身についたのか、知識・技能をどのように使えるかを測るものになっている。
 英語ディベート大会にも参加し、グローバルな社会問題について英語で討論するなど実践的な英語力の向上を図っている。そのため英語表現Ⅰの授業でミニ・ディベートや1分間スピーチを行い、定期考査では3人1グループで4分間のディスカッションを行わせるなど、授業での活動と学期末のSpeakingテストがしっかりとリンクするようにしている(資料3)。
 さらに探究科学科では、インターネットのスカイプを使って海外の大学院生や企業人とグローバルな問題やビジネスについて英語でディスカッションする「インターネット交流体験」、富山大の外国人教員や留学生、JICAの職員など外国語を母語とする人々を招いて、富山を紹介したり、国際関係論の講座を開催したりする「異文化理解ワークショップ」を行うなど、学校に居ながらにして海外の人々と交流する機会を数多く設けている。

海外における異文化体験が生徒の主体性を引き出す

 探究科学科で2年生3月に実施している海外研修も、生徒のコミュニケーション能力や表現力、主体性を飛躍的に向上させている。
 探究活動の一環として2014年度から始まった取り組みで、アメリカの高校や大学などを訪問し、高校生や大学生、社会人の前で課題研究の成果を英語で発表する。参加者は両学科から40人を、志望理由書や英語の自由英作文、英語の成績やGTEC for STUDENTSのスコアなどを総合して選抜する。
 生徒たちにとってハードルが高いのは、英語による発表よりも、その後の質疑応答である。「シンプルな言葉で相手に分かるように説明するには、発言内容に対する深い理解がなければなりません。語学力以前の問題として、話す内容がないとコミュニケーションが取れないということを生徒たちは痛感したと思います。うまくコミュニケーションがとれなかった、自分の英語が通用しなかったといった失敗体験から、もっと勉強しなければいけないという思いを抱いて帰国した生徒も少なくなかったと思います」(越後先生)。
 実際、研修に参加した生徒の成長は著しい。同行した串田教頭は「わずか8日間でこれほど生徒が変化した研修は初めて」と絶賛する。「グローバル・リーダーに必要な条件は何かというテーマで、英語によるディスカッションを行った際、生徒たちが一斉に手を上げたのに驚かされました。国際的な場では、自分から話さない限り発言の機会はないということを、研修前から繰り返し伝えてきたので、生徒たちも自覚をもって参加してくれたのだと思います」。
 日常の授業で質問すらしたことのない生徒が、数日後には積極的に英語で発言していたのも先生方を驚かせた。その生徒は帰国後も積極的に先生とコミュニケーションをとるようになったという。
 帰国後、海外研修の経験を他の生徒と共有するための場も設けている。研修に参加した生徒としなかった生徒、来年研修を受ける2年生の生徒が縦割りで少人数グループをつくり、体験の共有や質疑応答を行う。人文社会科学科では実用的な英語力を養う「英語ゼミ」という特別科目の中で実施し、ディスカッションはすべて英語で行った。

校内の全学科、教科でアクティブ・ラーニングを導入

 同校では学科を問わず、すべての教科でアクティブ・ラーニングの導入を推進している。地歴では「統計データから何がわかるのか」という問いについて、従来なら生徒一人ひとりにあてて個人でしゃべらせていたところを、生徒個人に考えさせたうえで3、4人の生徒とシェアして意見を述べ合ったり、議論を深めたりするスタイルに改めた。
 「最初は進度の遅れを懸念していましたが、グループでシェアしたり自分で表現したりすることで知識の定着が良くなることがわかり、内容によっては、かえって効率的に授業が行えることが分かりました」と越後先生は語る。友だちの発言に対しては意見を言いやすいため、議論が発展するというメリットもある。
 もっとも、上位層を伸ばすにはアクティブ・ラーニングだけでは難しいと串田教頭は述べる。「上位層にとっては、他の生徒に教えることで自分の理解度を確認できるメリットがあるのは確かです。しかし、自分自身が新しい発見を得るためには、アクティブ・ラーニングだけでは難しい面もあります。学びには必ず孤独な側面があります。私の英語の授業では、私自身も分からないような高度な質問を『次の時間までに調べてきて』とさりげなく投げかけ、上位層を刺激するように心がけています」。

取り組みの成果と今後に向けて

 課題研究を通して、生徒の世界観が広がっていることが何よりの成果である。課題の設定から仮説の形成、検証を通して課題の解決までの一連の流れをやり切ったことに、生徒たちは自信を深めている。生徒の意欲や挑戦マインドも高く、難関大の志望者も増えた。最後まで目標を落とさず志望を貫き通す芯の強さも出てきた。
 「プレゼンテーション能力が高まり、人前で話すことが得意になった」など、探究活動における議論や発表を通して自身の成長を実感する生徒、「専門的な学問に興味を持っている生徒が多く、中学ではできなかったハイレベルな会話ができる」など、生徒同士で刺激をし合い切磋琢磨する雰囲気も生まれている。
 英語力については、1年生におけるGTECのスコアの伸びが毎年大きくなっており、指導が積み上がっていることも多くの教師が実感しているようだ。一方課題は、探究活動の評価方法を確立することである。現在、ルーブリックの運用が始まっているが、まだ改良の余地は多いという。「そもそも探究力とは具体的にどのような力なのか、まだ校内で統一的な見解を得られていない部分もあります。どのような力を育てることが、生徒の将来を開くことにつながるのか。先生方と議論を繰り返しながら、より良い評価指標の確立に努めていきたいと思っています」(串田教頭)。
 もう1つの課題は、探究活動の普通科への波及だ。探究力の育成が生徒の将来を開くのであれば、その力をどのように普通科の生徒に身につけさせていくのか。現行のカリキュラムの中で、どのように探究科学科のノウハウを普通科に広げていくのかを校内で検討していく予定である。

左:お話を伺った串田至人教頭/右:お話を伺った越後喜紀先生
PAGE TOP