継続的に英語力の伸びを測定できる
スコア型英語4技能検定

Vol.83Report

校種を超えた切磋琢磨から改革の礎を築く~国際社会で活躍する人材の育成を目指して~

第1回「とちぎ英語教育推進中核教員研修」及び「グローバル人材育成事業」

小・中・高等学校の教員が集まり協同してワークショップに取り組む

 栃木県教育委員会は、英語を用いて積極的にコミュニケーションを図れる人材を育成するため、「とちぎ英語教育改善プランを作成した。同プランは、「英語教員スキルアッププラン」、「グローバル人材育成事業」、「国の事業の積極的活用」、「英語力検証事業・外国語教育状況調査」、「小・中・高等学校教育研究会との連携」の5つの取組から成る。

 「英語教員スキルアッププラン」の柱として2014年度に始まった取組が、「とちぎ英語教育推進中核教員研修」(以下、研修)だ。選抜された小学校教員5人、中学校英語担当教員20人、高校英語担当教員10人の計35人が、一人一人研修テーマを設定し、それぞれの研修計画を作成し、ワークショップなどを協同して行う。取組には大きく2つのねらいがあると、栃木県教育委員会指導主事の近藤康弘先生は語る。

「1つ目は、栃木県としての目標の共有です。国際社会で意思を疎通するツールとして英語を使える人材を育てること。ここに先生方の視線を揃え、校種の別を超えて同じ未来を見据えながら、英語教育に取り組んでほしいという思いがありました。

 2つ目は、交流を通して異なる校種の先生方同士の相互理解を深めてもらうことです。中学校・高校でどのような力が求められるかも分かりますから、小・中学校の先生方はそれに応じて、何を重点的に教えるべきか、どのように指導すべきかについても具体的なヒントが得られるでしょう。小学校から中学校へ、中学校から高校への接続をスムーズにすることにもつながると考えました。

 2つのねらいはいずれも、参加者の先生方がいわばメッセンジャーとなり、研修で身に付けたことを自校で広めてこそ、実現できるものです。そこで、小学校の外国語活動、中学校・高等学校の英語教育の中核を担っている先生方に参加してもらうことにしました」

 研修は5回に分け、次のような内容で取り組む。

「参加者同士の結び付きや英語力、教科指導力を段階的に高められるように、内容を工夫しました。研修によって日々の授業や校務に支障が出るようでは本末転倒ですから、先生方に負担を掛け過ぎないようにも配慮しました」(近藤先生)。

校種間の違いを実感し理解を求める班別協議

 6月19日(木)の第1回研修では、3つのプログラムが行われた(表1)。
 1つ目の班別協議では、小学校教員1人、中学校教員4人、高校教員2人の7人1組5グループに分かれ、指導で感じている課題などを話し合った。

 多くのグループで、小学校教員からは「英語に対する子どもの興味をさらに伸ばすためにALTとの事前の打ち合わせをもっと行いたい」という声、中学校教員からは「writingを苦手とする生徒が多い」という声、高校教員からは「大学入試を意識するため、授業がどうしてもWritingとReadingに偏ってしまい、SpeakingとListeningnにあまり取り組めない」という声が上がった(表2)。

「中学校では家庭学習指導の仕方、高校では大学受験に向けた取り組みを課題として挙げる先生が多かったと、私は感じます。ともに学力向上についての課題ですが、意識の持ち方には相違が見られた気がします。例えば、高校の教員は中学校の教員よりも、進路などについて自校の目標を達成することを考えて発言していたのではないでしょうか。

 一方、小学校の教員には、子どもが英語によるコミュニケーションを楽しめるようにするために何ができるかという、いわば教育の原点を語る人が目立ったと思います。校種ごとで教員の着眼点が違うことがはっきりし、互いを知る良い機会になったと考えています」 (近藤先生)。

 参加者は班別協議の内容を踏まえ、6月中に各自の研修テーマと研修計画を決めた。

「他校の様子が分かるようになれば、連携するための課題がよく見えるようになるはずです。その気づきを生かして今後の研修に臨めるように、テーマと計画は敢えて協議の後に設定することにしました。 ただ、協議によって自分の考えがどう変わったかも意識してほしいと、仮のテーマと計画は事前に立てておいてもらいました。それを事後に修正し、最終決定にしたわけです」 (近藤先生)。

講和とパネルディスカッションで日本の英語教育の未来を考えるヒントを得る

 第1回研修の2つ目のプログラムとして、国立教育政策研究所教育課程調査官の直山木綿子先生と平木裕先生が「これからの日本の英語教育について」というテーマでそれぞれ講話を行った。

 直山先生は、文部科学省が進める「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」によって、小・中学校、高校で求められる英語の学力がいかに大きく上がるかを解説した。
 特に小学校では、高学年で英語が教科化され、中学年で外国語活動が始まるため、高度な英語指導力を備えた教員の育成が急務であると強調。外部人材の活用促進、指導用教材の開発、教員研修・養成体制の充実など、文部科学省が準備している教員支援策の概要を説明した。

 平木先生は、主に高校での英語教育の在り方について語った。英語で授業を行うことは、生徒が英語に触れる機会を充実させ、授業をコミュニケーションの場にするための手段であると力説した。
 また、「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では、生徒の英語による言語活動を中心とした授業が高校に求められていると説明。これを充実させる上で、小・中学校の授業から学べることがたくさんあると、他校種と連携する必要性を訴えた。

 3つ目のプログラムでは、直山先生、平木先生、栃木県真岡市立中村中学校教頭の大越武先生がパネリストとなり、「我が国における英語教育の未来と可能性」をテーマに意見を交換した。

 今後の英語教育に関して、直山先生は「小学校の先生は子どものエキスパートとして、中学校の先生は教科のエキスパートとして自信を持ってほしい」と呼び掛け、大越先生は中学校教員に向けて、小学校・高校を視野に入れた授業構想力と授業改善力を挙げ、平木先生は高校教員に対して、生徒と一緒に英語を楽しむ気持ちを期待した。

 パネルディスカッションの途中では会場との質疑応答も行われ、教材選びのポイントや英語の読解力を高める指導など、さまざまな論点が示された。

 第1回研修は、小・中学校、高校それぞれの教員が互いの文化の違いや違いから学べることを認識し、それを今後の英語教育にどのように生かしていくかを考える機会となったに違いない。閉会後に回収された「振り返りシート」所載のアンケートでは、ほぼ全員が他校種の教員と有意義な意見交換が「できた」(「できた」+「おおむねできた」)と答えていた。自由回答欄のコメント(表3)を見ても、参加者の満足度の高さが伝わってくる。
 英語をツールとして使いこなし、国際社会で活躍する人材づくり——。研修は始まったばかりだが、栃木県教育委員会の掲げる理想は校種を超えたつながりによって実現への一歩を力強く踏み出した。

留学支援を通して海外に対する生徒の意識を高める

 栃木県教育委員会の「とちぎ英語教育改善プラン」の1つ、「グローバル人材育成事業」では、生徒の英語力を高め、視線を海外に向ける取組を支援している。

 例えば、高校での英語ディベート大会を強化し、普及するための財政支援が挙げられる。「ディベートを通して英語で論理的に考える力を伸ばせるはずですが、課外活動なので、生徒全員が参加するわけではありません。そこで、ディベートを指導している先生方には、ディベートでの英語の使い方、表現の仕方を、ぜひ授業で紹介してほしいと呼び掛けています」 (近藤先生)。

 また、高校の留学支援にも力を入れている。留学説明会をはじめとした様々な行事においては、有識者を講師として招き、日本と海外の文化の違いなどについての講演会も実施する。さらに、留学を経験した高校生に、留学を通して自分が何を感じたか、どう変わったかなどを語ってもらっている。

「自分と同じ高校生の留学体験談を聞けば、生徒は『自分も海外を見てみたい』という気持ちをますます強くする」と、近藤先生は話す。2013年度は、長期・短期を含めると、海外留学を経験した県内の公立高校の生徒数が過去5年間で最高となった。海外に対する生徒の意識は着実に高まっていると言えるだろう。

PAGE TOP